遺書と遺言書と遺言証書の違い[書き方例文付き]

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近年少子高齢化社会がすすむにつれて、高齢者が社会において占める役割が大きくなっています。昔に比べて元気な高齢者も増えています。

ただ、一定以上の年齢に達すると、いつ何があってもおかしくないものです。心臓や内臓などに持病がある場合などはなおさらですし、認知症にかかる可能性もあります。

このようにして動けなくなったり判断能力が低下してしまう前に、自分の死後のことについて書き残しておくことは非常に大切です。

自分の死後について意思を残す方法としては、遺書や遺言書(遺言証書)がありますが、これらの遺書、遺言書、遺言証書はそれぞれ何がどのように異なるのでしょうか。

今回は、遺書と遺言書、遺言証書の役割と違いについて解説します。

遺書とは

遺書とは、自分の死後、家族や親しい人、友人などの大切な人に読んでもらって自分の思いや気持ちを伝えたり、死後に実現してほしいこと(埋葬方法や妻の介護、兄弟仲良くするようになど)をお願いする書面です。

遺書は、民法などによる法律の制約を受けないので、どのような内容を書くのも自由です。有効であるとか無効になるなどの問題もありません。

遺書を書くときというのは、概して死期が差し迫っていることが多いです。
たとえば病床についていて死が間近に迫っている状態であったり、自殺者が自殺を実行する前に遺書を書き残すことも多いです。

いじめを苦に自殺する中学生などが「遺書」を残していることもありますが、これは「遺書」であって「遺言書」ではありません。

これは遺書が「死ぬこと」を前提にして、死に際しての自分の気持ちを、遺書を残す対象である家族などに託す手紙だからです。

遺書内には身の潔白や加害者の暴露、家族への思いやお願い事などを書きますが、所有している財産の処分について記載することは殆どありません。

遺書の書き方・例文

遺書には法律的な制約がなく、何を書いても自由ですので、特に定まった書き方や例文はありません。文体も文量も完全に自由です。

有効か無効かが問題になることもないので、形式にこだわる必要は全くないのです。
遺書を書く紙も、どのような紙でもかまいません。原稿用紙を用意して書いてもよいですし、ノートやレポート用紙でもかまいませんし、緊急の場合にはメモなどにしか残せないこともあるでしょう。

ただ、残された家族に遺書の内容を大事に扱って欲しければ、出来れば原稿用紙に書いて封筒などに入れておいた方が良いでしょう。

遺書に書く内容についても、特に制限や決まりはありません。たとえば、自分の死後の葬儀の宗派やお墓や散骨などの埋葬方法について、生前お世話になった人への感謝の気持ちを表現したり、子供達に対しての思いや兄弟仲良くするように、など、どのような内容を書いてもかまいません。

遺書を受け取った人たちの側からしても、遺書に書いてある内容から特に拘束を受けるものではありません。

たとえば「兄弟仲良くするように」と遺書に書かれていたとしても、兄弟仲良くしなかったら何か罰則があるわけではありません。
以上のように、遺書とは、法律的な制約を受けることなく自分の思いや死後の処理の希望などを大切な人に伝える文書と考えるとわかりやすいです。

遺言書とは

遺言書とは、民法に定められている厳格な要式に従って作成されており、死後の財産処分などの法律的処理に関して記載されている法律文書のことです。

民法は、遺言書の種類や作成方法、内容、取り扱い方法や効力などを細かく規定しています。遺言は厳格な要式行為ですので、民法上定められた方式に従って作成されたものでないと無効になってしまいます。

遺言者でない者が遺言の内容を勝手に書き換えたりすると、遺言によって財産を受けるはずだった人であっても罰則を受けることもあります。

これに対し、先ほど解説した「遺書」には「遺言書」のような要式や管理についての決まりはありませんので、この点で既に「遺書」と「遺言書」が全く別であることがわかります。

また、遺言書では、書き残す内容も完全に自由ではありません。遺言として効果が認められる内容にも制限があります。

法律で定められた遺言事項は以下のような内容が挙げられます。
たとえば相続分の指定や遺産分割方法の指定、特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」こと、遺産分割の禁止、遺贈、信託の設定、子の認知、未成年後見人、未成年後見監督人の指定、遺言執行者の指定、祭祀承継者の指定、遺言の取消、生命保険金の受取人の指定や変更などが遺言で取り決められる内容になります。

これらの遺言事項については、きちんと法律に従った方式で記載して遺言書内に書かれている場合には、遺言を受ける人たちにその内容を守る義務が発生しますので、単なる遺書とは違って確実に自分の希望を実現することが可能です。

遺言書の中に、法律上に規定のない事項、たとえば埋葬方法などについて書き入れることも可能ですが、これらについては遺言書を受け取った人には義務が発生しません。
法律的な意味合いを持たない内容部分については、遺書と変わらない効力しか持たないということです。

また、遺言書の一部に上記のような効力を持たない内容の記載があっても、そのことによって遺言書全体が無効になるわけではなく、当該部分についてだけ法的効力が発生しないということになります。

遺言書の書き方・例文

遺言書の書き方や例文を見てみましょう。
遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言の種類がありますが、公正証書遺言の場合は公証人が文章を作成してくれますので、書き方などを気にする必要はありません。書き方や例文が問題になるのは主に自筆証書遺言の場合です。

自筆証書遺言には法律に定められた要式が定められており、要式に不備があると、自筆証書遺言全体が無効になってしまいますので注意が必要です。
具体的に、自筆証書遺言作成の際には、以下のとおりのルールを守る必要があります。
まず、遺言の文書内容や、日付などをすべて自書し、遺言者の署名も自書でする事が必要です。パソコンで作成したり、他人に代書してもらった遺言書は無効ですし、音声やビデオレターなどによる遺言も無効です。

日付については明示が必要で、たとえば2015年10月「吉日」などと書いても無効になってしまいます。日付も自書が必要なので、スタンプ等を利用すると無効になります。
署名も自書でした上、押印します。押印は認印でも有効ですが、遺言が本物か偽物かなどの後々の争いを防止するためには実印を用いることがおすすめです。

なお、遺言書の内容を考えるとき、法定相続人に最低限認められる遺留分という権利がありますが、遺言書の内容が遺留分を侵害する内容になっていると、死後に相続人同士の間で「遺留分減殺請求」が起こり、トラブルになるおそれが高いです。
よって、遺言によって財産のほとんどを一部の人に相続させる場合であっても、法定相続人の遺留分には留意しておいた方が良いです。

たとえば長男にほとんどの財産を譲る場合であっても、次男には最低限次男の遺留分程度の財産を残すようにするなどの配慮をしておくと、後々のトラブルが避けられます。
遺言書が完成した場合の保管方法については特に法律上の規定はありませんが、遺言書が出来たら、封入して封印の上保管しておくと良いでしょう。

遺言書の文例としては、以下のようなものが考えられます。
たとえば内縁の妻に全財産を残したい場合には、表題として「遺言書」と書いた上で

遺言書

私こと遺言者〇〇は、次の通り遺言する。
私は、私の所有する一切の財産を、内縁の妻である〇〇(昭和○○年〇月〇日生)に相続させる(包括して遺贈する)。

平成○○年〇月〇日
大阪府大阪市〇〇区〇丁目〇番〇号

遺言者 〇〇 〇〇 印

などと書きます。

遺言証書とは

遺言証書とは、民法によって定められた方式に従い、遺言内容を記載した法律書面のことです。

遺言証書は、先ほどの「遺言書」と同じものを指すことが多いです。遺言証書のことを、世間一般では「遺言書」と言っているのであり、法律上の要件を満たした遺言書の正式名称が「遺言証書」です。
よって、遺言書と遺言証書は、内容的にさほどの違いはありません。

法律的な要件を満たせば「遺言証書」ですので、公正証書遺言だから遺言証書であり、自筆証書遺言だから遺言書になるなどの区別もありません。

公正証書遺言であっても自筆証書遺言であっても、法律的な要件を満たして有効なものであれば「遺言証書」です。

遺書、遺言書、遺言証書それぞれの違いをまとめます。
まず、遺書とは死に臨んだ人が、その意思や気持ち、死後の希望などについて、形式にとらわれず自由に書面に残し、後に残された人に託す書面であり、特に法律的な制約はありません。その代わり、遺書を受け取った人も遺書によって何らかの制約を受けることはありません。

遺言書は、法律的な要式に従っており、死後の法律的処理について記載された法律文書で、主に財産処分方法などの法律問題について記載されるものです。遺言は厳格な要式行為なので、要式を満たさない場合無効になりますが、有効な遺言書がある場合には、遺言書をうけとった人や関係者は、遺言の内容に拘束されることになります。

遺言証書とは、法律的な要式に従って遺言の内容を記載した法律文書であり、遺言書の正式名称です。遺言証書を俗に遺言書と呼んでいると考えると良いでしょう。
遺言書と遺言証書はほぼ同義だと考えて大丈夫です。遺言書と遺言証書の区別は、公正証書遺言と自筆証書遺言の違いの問題とは別です。

まとめ

以上のように、遺書は、通常死期の近い人などが、受け取った人(大切な家族や恋人など)に対して感謝の気持ちを伝えたり、埋葬方法の希望を書き残したり、「兄弟仲良くするように」など、自分の思いや希望を伝えるための文書です。

特に法律的に定まった要式はなく、書き方も内容も自由です。有効であるか無効になるかなどの問題も発生しません。その代わり、遺書を受け取った人たちも、遺書の内容に拘束されることはありません。

これに対して、法律上の要式に従い、法律において定められた遺言事項について記載されているものが遺言書または遺言証書です。

遺言証書が正式名称で、遺言書は遺言証書の俗称だと考えるとわかりやすいです。

遺言書(遺言証書)には自筆証書遺言と公正証書遺言があります。

遺言書(遺言証書)は、法律要式を満たしていないと無効になりますが、有効な遺言書(遺言証書)がある場合には、関係者(受遺者や遺言執行者など)はその遺言書(遺言証書)の内容に従わなければなりません。

自分の死後の財産処分方法などを指定し、これを確実に実現したい場合には、遺言証書(遺言書)を残しておくようにしましょう。

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